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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)865号 判決 1969年11月06日

上告人

広村美恵

代理人

南舘金松

南舘欣也

被上告人

広村和夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人南舘金松、同南舘欣也の上告理由第一点および第二点について。

上告人主張のような確定日付を附した二通の財産留保証書が真正に成立したこと、および右二通の財産留保証書に留保財産として上告人主張の各不動産が記載されたことを認めるに足りる証拠がない旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして、首肯することができ、その間所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第三点について。

旧民法九八八条の規定について、同条の趣旨は、財産留保の意思表示は必ず書面によることを要することとして、財産留保の意思表示の存否および留保財産の範囲に関し後日生ずべき紛争を未然に防止するとともに、右書面には確定日付を要することとして、財産留保の意思表示が隠居の日もしくはその以前になされたものであることを担保せしめるにある、とする原審の解釈は正当である。そして、旧民法九八八条の趣旨が右のとおりである以上、所論の点に関する原審の判断は相当であつて、所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立脚し原判決を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

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